ゆるり日記

息抜きに身の回りのことや聖書のことなど気の赴くまま書きます

良い実を結ぶ

昨日は母が入所している特養の看護師から電話がありました。母は穏やかに過ごしているとのこと。

1人で居る時は食が細くなって痩せたので医師に処方してもらった経腸栄養剤「エンシュア」で栄養を補っていましたが、今は出された食事の8割方は食べているそうで栄養剤は必要ないようです。

まだ母の声を聞くことは出来ませんが食欲が回復していると聞いて一安心です。

 

 随分前のことですが、私が親しくしていたMさんが自閉症の息子さんや行き場のない自閉症の親子のために小規模作業所を設立したいという強い願いを持っていて、その願いの実現に向けて私は準備段階から関わりました。

設立前に設立のための祈祷会を立ち上げ、その道のプロの方々を招いて何度も勉強会を開き、複数の施設見学に行きました。私は全く初めての世界に関わるにあたって本を読みました。

読んだ本は「この子らを世の光に」糸賀一雄著、「大地」パール・バック著、「母よ嘆くなかれ」パール・バック著、「この子らは世の光なり」「なぜこの子らは世の光なりか」伊藤隆二著、「光をみつめて」皿井寿子著…などです。

作業所の場所は教会の施設を無償で借り、教会には保健所の指導に従ってリフォームをする為の許可を得ました。

入念な準備をしてMさんと私で保健所の営業許可証を申請に行ったら担当者の方から「夢を持つのは誰でも持つけれど、実際に実行に移せる人は少なくて大抵は夢で終わってしまう。しかし、あなた方の行動力に感動しました。是非頑張って下さい」と激励されました。

ボランティアと賛助会員を募り、それも順調に集まりました。私は準備段階からどっぷり関わっていましたが、教会スタッフとしての仕事がありましたので教会との橋渡し役とMさんのアドバイザーとしては関わるが運営の中心メンバーにはなれないと明言してありました。

とはいっても現実に人材が不足しているのに見て見ぬふりは出来ません。結局は経理と賛助会員向けニュースレターの作成と発行を引き受けました。作業所に入り浸っていなくても出来る仕事です。

作業所はクッキーやケーキなど焼き菓子の製造販売をしました。クッキーもケーキも大好評でファンがつきました。行き場を失った親子が来て仲間も増えていきました。お菓子作りとラッピングはボランティアの婦人たちがして、作業所の仲間たちは施設のキャラクターシールの色塗りとカッティングなど彼らの得手とする部分を担って和気あいあいの中、何もかもが期待以上に順調に進みました。

しかし、自分たちの力以上の注文を引き受け続け、その負担の多くをMさんが負っていました。Mさんのご家族からMさんの帰りが遅いと私に連絡がありました。その時初めて状況を知った私はそれから何度かMさんに「受注を抑えて家庭とのバランスを取って下さいね」と言いましたが達成感と充実感で乗っていた時ですからコントロールが難しかったのか抑制がきかないようでした。

普段から愚痴をこぼさないMさんは疲れた様子も見せてはいませんでしたが、実は黙って力以上のことをやり続けていたのでしょう。ある日Mさんが私のところに作業所を閉鎖したいと伝えに来ました。突然のことでした。

彼女の家庭のことを考えるとそれも致し方ない決断だと思いました。経営のノウハウも知らずによく頑張ってきたとも言えます。私は「お疲れ様でした」と彼女を労い、彼女に頼まれた閉鎖に関わる手続きを引き受けました。残念ながら3年ではまだ後継者も育ってはいなかったのです。

急なことではありましたが3年間だれよりも頑張ってきたMさんを責める人は一人もいませんでした。作業所の仲間たちの受け入れ先を見つけたり、後を濁さないよう思いと手を尽くしたこともあって最後の「ありがとう会」は明るく和やかなものでした。

関わった多くの方がそうでしたが、私もMさんのお陰で思いがけず未知の世界を知り、良い学びと交わりの機会をいただいたことに心から感謝しました。それが彼女の蒔いた種であり、結んだ実だったのかも知れません。

夢や情熱だけではどうにもならないことがあります。会社経営なら経営スキルも必要ですが、何ごともしっかりとした理念と使命感なくしてずっと残る良い実を結ぶことはできないと思うところです。

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